佐藤益弘
マイアドバイザー(R)登録
CFP(R)資格認定者(J-90032758)
某メーカーの不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、FP資格を取得。2000年8月より独立系FPとして独立。3つの独立系FP会社設立に参画。
現在、顧客サイドに立ったシンの独立系FPのネットワーク確立のため、(株)優益FPオフィス代表として活動中。
前回は、「土地白書」に書かれている2013年度の土地に関する動向から現状を把握するところまでお伝えしました。
2013年の不動産市況は、消費税の駆け込み需要などもあり、経済統計的には、おおむね好調だったわけです。
今回は、その続きです。不動産投資を行う上で押さえておきたい「2014年度に行われる(あるいは行われそうな)土地に関する基本的な施策」を見ていきたいと思います。
まずは、施策に関連する基礎的な情報から。
2014年1月1日時点の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(総務省)」によると、外国人住民を除いた日本人住民の人口は1億2,643万人であり、昨年よりも−0.19%、5年連続で減少しています。しかし人口増加率を都道府県別で見ると、東京都をトップに、それに続く沖縄県、愛知県、埼玉県、神奈川県……と、人口が増えているところも見られます。つまり、日本全体で考えると人口減少をしているとはいえ、どのエリアでも横並びに減少しているのではないことが分かります。今後も三大都市圏を中心に人口が流入してくるのは間違いなさそうです。
団塊の世代が65歳以上となり高齢者の仲間入りをすると、相続の発生度合いが増えてくることが容易に想像できます。それを踏まえてか、2015年より相続税の改正が行われます。
相続を考えたとき、土地保有者にとって境界確定の問題は重要で、何らかの理由で境界が未確定の場合、とても厄介な問題をはらむことになります。特に法務局(登記所)が備え付けている地図(地図に準ずる図面を含む)に記載されている内容と、実際の土地の位置や形状が違っている「地図混乱地域」にある土地では、問題が続発することが予想されています。そこで、そのようなエリアが多く存在している大都市圏で、地籍調査等の実施や不動産登記法第14 条第1項地図の作成作業が重点的かつ集中的に行われるようです。
その他、土地の所有・利用・取引状況や地価等に関する情報を体系的に整備するため、地価公示や不動産取引価格情報の提供を行うこと、また、「法人土地・建物基本調査」に基づき土地取引の実態等を明らかにするための統計資料の作成・整備等を行う等の施策が明記されています。
近年の不動産市場の国際化や空き家増加によるストック型社会の進展、またREITなどによる不動産証券化市場の発展など、不動産鑑定評価に対するニーズの多様化が進んでいます。取引価格と不動産鑑定評価額(担保評価)が乖離(かいり)することも予想されているため、また、不動産鑑定評価自体の信頼性を向上させる目的もあり、不動産鑑定業者に対する立入検査等の「鑑定評価モニタリング」を実施し、不動産鑑定評価基準等が改正されるようです。
一方で、海外に比べ、しっかりした不動産関連の情報が不足していることが日本の不動産の投資リスクだと言われています。
欧米の金融危機を踏まえ、日本でも既に不動産価格指数(住宅)については国際指針が作成され、試験運用されていますが、商業版の不動産価格指数の国際指針の作成は遅れており、この作成について検討が行われます。商業版の指針が完成して運用されることになれば、不動産市場の動向を同じモノサシで測れることになり、情報の透明性が向上し、海外から日本の不動産への投資の活性化が期待されます。
住宅市場では、今までの新築重視の政策を転換し、今後は、中古住宅市場を中心とした不動産流通市場の整備・活性化が図られます。例えば、平成27(2015)年度税制改正においては、中古住宅流通ならびにリフォーム市場の拡大・活性化や、老朽化マンションの建て替え等の促進のための特例措置が講じられる見込みです。また、中古住宅の質の向上を図るため、劣化対策・省エネ改修等を総合的に行い、住宅の長寿命化を図る長期優良住宅化リフォームに対する支援や、独立行政法人住宅金融支援機構が供給するフラット35Sによる金利引下げ等も実施されるようです。
また一方、資金不足や投資条件が合わず、建て替えや補修などが行えないために再生できない収益不動産が多く取り残されているという問題があります。もともと、不動産ファンドを組成する場合、投資対象物件が好立地で耐震性に問題がないといった投資適格不動産や大規模物件に事実上限定されるからです。そのような現状を打破することは、不動産投資市場の活性化につながるため、2013年末に成立した「不動産特定共同事業法の一部を改正する法律」に基づき、老朽化したオフィスビルや地方の中小規模物件などの再生や、ヘルスケア施設を投資対象としたヘルスケアリートの活用に向けた環境整備等がなされる予定です。
多岐にわたる 「土地白書」 の内容ですが、不動産投資分野で活用できそうな情報をピックアップしてお伝えしました。
このように、政府がどのような施策を策定し、行政がどのような行政サービスを行おうとしているのかが分かると、良い悪いはともかく、世の中の進む方向性やトレンドがイメージできるので、“一歩先読みした行動”ができるでしょう。ビジネスには、先行者利得があるとされています。その利益をつかむためにも、不動産投資においては「土地白書」等を生かしていきましょう。
今後、状況に進展があれば、本コラムで情報を追加していきたいと思います。
某メーカーの不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、FP資格を取得。2000年8月より独立系FPとして独立。3つの独立系FP会社設立に参画。
現在、顧客サイドに立ったシンの独立系FPのネットワーク確立のため、(株)優益FPオフィス代表として活動中。
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